イルカ漁に反対します。即時停止を求めます。

ANJ からの要望書を転載いたします。

皆様のお力をどうぞお貸し下さい。

    要望書

                               2014年2月6日

内閣総理大臣     安倍 晋三 殿

環境大臣       石原 伸晃 殿

農林水産大臣      林 芳正 殿

水産庁長官      本川 一善 殿

和歌山県知事     仁坂 吉伸 殿

太地町長       三軒 一高 殿

太地町漁業協同組合    組合長 殿

要望の趣旨

イルカ追い込み漁を直ちにやめてください。

要望の理由

1.イルカ漁は、その捕殺方法を含めた漁法自体が残酷である。

現在、わが国で行われているイルカ漁(イルカは、野生の哺乳類なので、「猟」という文字を用いるのが正しいが、現在和歌山県太地町で行われているイルカ漁は、法令上は、漁業法第65条第1項、水産資源保護法第4条第1項、和歌山県漁業調整規則第7条第17号に基づくものであり、漁業という捉え方をされているので、この要望書では、「漁」という文字を用いる)には2種類ある。即ち、突棒漁と追い込み漁である。

本件で問題とする追い込み漁は、狭い湾内に群ごと追込み、網で囲い込んで逃走不能な状態に陥らせて、生け捕りにし、或いは恐怖のためにパニックに陥ったイルカの中から無作為に捕殺するものであり、群全体に多大な恐怖心を与える上、殺害されるイルカに関しては、絶命するまでに長時間を要するものであり、殺害されないイルカに関しても、恐怖のためにショック死をしたり、精神に異常をきたす個体もあり、極めて非人道的な漁法である(一方、突棒漁は、船上から銛でイルカを突き刺して捕獲するものであって、苦痛が大きい上、絶命するまでに長時間を要するものであり、これもまた、非人道的な漁法である)。

現実に、イルカ漁には透明性・公開性がなく、実際殺害時には見えないようにシートで隠されている。一方、イルカの追い込み漁ではこれまで動物福祉に反する残酷な事例が多数報告されている。イルカ漁には、以下のような現実がある。

(1) 追い込み時に漁船から水中に鉄パイプを差し入れて激しく叩きイルカの音波探知機能を撹乱してパニック状態にする。

(2) 生け捕り時にはイルカを執拗に追い回し、パニック状態に陥ったイルカは漁船や仲間同士で激しくぶつかり血だらけになっていること、漁網に絡まって窒息死するもの、パニックで溺死するもの、捕獲時にショック死することが報告されている。

(3) 傷や衰弱などのため生体として売り物にならないイルカは殺害されるが、殺害時には「金属棒が噴気孔に刺しこまれ、出血、窒息して死ぬまで放置された」との報告がある。

(4) 不要となったイルカは再び海へ返されるが、その時には衰弱してひどく傷ついており野生で生き延び、繁殖を続ける事が困難といわれている。

(5) ストレスのため搬送先の水族館でも死亡する。

イルカ漁における生け捕りは、水族館に送るためになされるが、このように娯楽目的の水族館にイルカを送り込むために、その過程で多数のイルカが犠牲になっている。

ところで、日本の法令には動物福祉に反する残酷な捕獲方法、残酷な殺処分方法への規制・罰則はなく、また第三者機関によって監視検証する制度もない。イルカは野生の哺乳類(鯨偶蹄目のうち、小型の歯鯨類)であるにもかかわらず、野生の哺乳類を対象とした鳥獣保護法の規制対象から外され(同法80条1項、同法施行規則78条2項)、漁業法による規制対象とされている(主に家庭動物を対象とした動物愛護法の規制対象でもない)。また、イルカは、IWCの規制対象からも外されている。現在、わが国においては、イルカ(大型の歯鯨類やひげ鯨類も同断である)の捕殺に関しては、全く法規制がない無法状態であると言わねばならない。

諸外国では食肉用動物に対する飼育・輸送・屠殺時の福祉の理念が一般化しており、動物福祉上の規制・法令がまったくない日本の現状は、世界的に見ても問題が多い。世界178の国と地域が加盟し、日本も加盟しているOIE(国際獣疫事務局)の規約では「動物福祉には、人道にかなった取り扱い、無痛屠殺・殺処分が必要になる」とし、「動物が苦痛、恐怖、疲れなど好ましからざる状態に苦しんでいない」ことを必要としている。また殺処分は「即死もしくは即時の意識喪失状態のまま死ぬという結果になるべきである。意識喪失が瞬間的に起きない場合、意識喪失への誘導は、嫌悪を起こさせない,あるいは動物の嫌悪が出来る限り最小限に押さえられるべきである。」とし、さらに「動物に避けられるべき不安、肉体的苦痛、疲労や精神的苦痛をもたらしてはならない。」と述べている。この規約は、野生のイルカを対象にしたものではないが、この趣旨は、当然、食料とされるために殺されるイルカについても考慮されるべきことであり、このような観点から見ても、イルカ追い込み漁は動物福祉にかなった捕獲方法・殺処分方法を用いておらず残酷であるといわねばならない。

国・和歌山県側の「捕殺方法は毎年改善されている」との主張を裏付ける岩﨑氏及び貝氏(2010年)の「和歌山県太地町のイルカ追い込み漁業における捕殺方法の改善」の見解には、金属棒を何度も差し込み流血を防ぐため栓をする=即刻の無感覚、一瞬で死ぬから苦しまないことが強調される。しかし、私たちはその見解には懐疑的である。なぜなら、近年の動画分析に基づいて、英国のブリストル獣医大学・ニューヨーク市大学ほか海外の研究者らが行った「現在日本の太地で施行されるイルカ追い込み漁の捕殺方法の獣医学的・行動学的分析」と題した論文のなかで、「椎骨血管及び血管叢の損傷は顕著な出血を引き起こすが大型ほ乳類に迅速な死をもたらさない/出血を妨げるのに栓をすることで致死時間を延長してしまう/脊髄の切断には高精度の操作が必要だが動画ではそれが実行されたとは考えにくい/脳は損傷しないのでずっと痛みを感じることになる/致死時間をどこに定めるかの問題がある」との分析結果が出されており、国・県の見解とはまっこうから対立するものだからである。

米国獣医学会AVMAは、「科学的、人道的、倫理的な観点からみて、追い込み漁のイルカに対する処置は、現代社会で認識されている動物福祉の基準と反する」と記述する。

私たちが見ることのできる限られた動画ですら、追い込み漁の残忍さを伝えるに十分であり、見る者だれしもに衝撃を与える。

2.イルカは高度な知能と伝達能力、喜怒哀楽の感情を有する動物である。

イルカは、他の多くの哺乳類に比してぬきんでた高度の知能や伝達能力を有すると同時に、犬や猫と同様に喜怒哀楽の感情を有する、情感豊かな動物である。このような動物に対して前記のような非常な恐怖を与えることは、極めて非人道的である。

またイルカは、家族を形成し、仲間として連帯感を持った群を作って生活している。前述のブリストル獣医大学・ニューヨーク市大学の論文には、「捕殺行程は数時間~数日かかり、家族や仲間達と非常に接近した状態で殺される/手技実施中ずっと鳴き声が聞こえていた/イルカは非常に社交性の高い哺乳類」との記述がある。イルカ漁は、必然的に家族の崩壊をもたらし、群に対して大きな傷を与える。家族や仲間を失った他の個体に対して、多大な精神的衝撃を与える。イルカ漁は、捕殺する個体のみならず、その家族や群に対しても大きな被害を与えるのである。

3.イルカは希少な野生動物であり、保護の対象であるべきである(CITES付属書II)。

現代において、イルカは、希少な野生動物であり、保護の対象とされるべきであるし、野生の状態において、私たちヒトと地球上の生活空間を共有する友として付き合っていくべき相手である。

和歌山県や国等は、イルカの捕獲については、国(具体的には、独立行政法人水産総合研究センター)が行う科学的調査に基づいて、資源量が十分な種類のイルカについてのみ、毎年捕獲数を定めて行われている、などと主張している。しかし、同センターが行う「科学的調査」とは、目視調査に過ぎず、科学的調査の名に値しない。しかも同センターは、役員の大多数(理事については全員)が水産庁の天下り官僚で占められており、体質的に国の政策に反する「調査」を行うことが困難であると考えられる上、同センターの行う「調査」や事業については第三者による検証がなされる体制にはなっておらず、その「調査」結果には信用性がない。つまるところ、現在わが国で行われているイルカの捕獲は、杜撰そのものであり、野生動物の保護の見地から、十分なものであるとは到底言えない。

しかも、野生動物との付き合いは、文明の発展とともに必然的に変化していくべきものである。かつては駆除・防除ないしは狩漁の対象でしかなかった狼や大型ネコ科動物が、現在では、その生活環境ないしそれが生息する生態系全体を含めて保護されるべきである、そのような生態系の保全自体が人類にとって有益な価値であると考えられるに至っている。それと同様に、現在、イルカは、それが暮らす海洋環境とともに野生の状態で保全されることが人類にとってのかけがえのない遺産であると認識されるに至っている。

国も、わが国の各自治体、各団体も、このような人類が到達した価値の重要さを認識すべきである。

4.イルカの追い込み漁は、日本古来の伝統とは関係がない。

イルカ漁は、わが国の伝統文化である、という立論が往々にしてなされる。しかし、太地町におけるイルカの追込み漁は、1960年代に初めて行われたものである(太地町史では1933年からとされるが)。しかも、その主な目的は、水族館への売買である。このような漁を、歴史や伝統ということはできない。

5.イルカを食物とする必要はない。

イルカは、重要な食材であるという立論もある。しかし、現に、多くの日本人はイルカが食料であることを知らない。仮に古来から食材として用いられていたものであったとしても、現在においては食材とすべきではなくなるものも多々ある。かつてはヒトやゾウ等は食材であった(地域が多々あった)。しかし、現在、これらを食材として用いている地域は地球上にはない。京都府にあった巨椋池の周囲では、現在特別天然記念物とされているイタセンパラ(タナゴの一種の淡水魚)を用いたタナゴ鮨が作られていたが、現在、この魚は食材として用いられていない。イルカもまた、食材とされるべき必要性は失われているものというべきである。

なお、諸外国においては、わが国のイルカ追い込み漁が伝統的な食文化などではなく、水族館への売買(一頭400万円以上とも言われている)が目的の商業捕鯨であることが見透かされており、伝統的な食文化論は相手にされていない。

6.世界の大勢はイルカ追い込み漁を禁止している。

世界動物園水族館協会は、その倫理規定において、イルカ追い込み漁を禁止し、日本の追い込み漁で捕獲されたイルカを輸入しないように警告を出している。

その上、諸外国では法律によってイルカの捕獲禁止、輸出入の禁止、水族館での展示禁止、鯨類を囲って飼育することの禁止、輸送の禁止などを行っている国が多い。

7.まとめ

以上のように、イルカ追い込み漁は非人道的であり、且つ、イルカ追い込み漁を存続させるべき積極的な理由はない。

従って、イルカ追い込み漁はただちに中止すべきである。また、国は、動物の保護に関する諸法令を改正し、野生動物を含む動物の取り扱い全般における、残酷な殺害の禁止を含めて、罰則を伴う動物福祉上の規制を整備すべきである。

              要望者:  全国動物ネットワーク  

TNR日本動物福祉病院 

北海道動物保護協会 

2014年02月07日(金) | お知らせ 子供達スタッフブログ
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